最後に周以恆に会ったのは、午前1時40分のことだった。
あのコンビニは相変わらずで、冷房が強く効いていて、おでんの匂いにコーヒーの香りが混じり、ガラス窓の外は雨上がりでアスファルトが濡れて光っていた。
彼は窓際の席に座り、私がよく知る灰色のシャツを着ていた。
彼を見た最初の思いは、意外にも怒りではなかった。
瘦せたな、と思った。
おかしいよね。
男に半殺しにされ、三ヶ月まともに連絡もせず、最後に別れ話をしに呼んでおきながら、座った瞬間にまず思うのが、彼がちゃんとご飯を食べているかどうかだなんて。
だから後でわかったんだ、一部の恋愛は本当に麻薬に似てるって。
良くないってわかってるのに。
やめられないんだ。
「何飲む?」
彼が聞いた。
私は冷蔵庫をちらっと見た。
「いらない」
「前はいつもラテ飲んでたのに?」
「今は飲まない」
彼は少し固まった。
本当は飲まないわけじゃない。ただ、急に彼が買うのは飲みたくなくなっただけ。
人間ってそういうものだね、不思議だよ。愛してる時は、25元のコーヒーでも優しさに感じる。愛さないと決めた後は、彼が椅子を引いてくれても、必要ないと思う。
周以恆は頭を下げ、両手を組んでいた。
私はこの仕草をよく知ってる。
彼が私にどう言えばいいかわからない時、いつもこうする。
最初は四年前。
結婚の準備ができていないと言った。
二度目は二年前。
元カノが戻ってきたと言った。
三度目は去年。
少し自分の時間が必要だと言った。
今回は、ようやく言い終えるのかもしれない。
私は彼を見た。
「言って」
彼は顔を上げた。
「そんなに冷静でなきゃいけないの?」
私は思わず笑いそうになった。
じゃあどうしろって。
コンビニの店員の前で、あなたの足にしがみついて泣けって?
もう私たちは二十歳じゃない。
大人が一番残酷なのは、崩壊する時でさえ場所を選ぶってこと。
「私を呼んだのは何か話があるからでしょ?」
彼は少し黙った。
「このままじゃ君に不公平だと思う」
私は思わず笑った。
本当に。
笑い方が突然すぎて、彼は逆に固まった。
「周以恆、男ってみんな同じ授業受けてるの?」
「何?」
「別れる時は『ごめん、君はもっと良い人を見つけるべきだ、君を傷つけたくない』って言うの?」
彼は眉をひそめた。
「そういう意味じゃない」
「じゃあどういう意味?」
彼は黙った。
私は窓の外を見た。
雨がまた降り始めた。
細い雨。
ほとんど見えないくらい細くて、街灯の下で銀色の糸が光るだけ。
実はもうわかってた。
女性が恋愛で一番悲しいのは、騙されることじゃない。
答えをわかっていながら、相手の言い訳をずっと探し続けること。
彼が返信しないのは仕事が忙しいから。
友達に会わせないのは性格が控えめだから。
将来の話をしないのは前の恋愛で傷ついたから。
彼は何度も私を後回しにしたのに、私はずっと『彼はまだ時間が必要なんだ』と思い続けていた。
後でわかったけど、「時間が必要」っていう言葉は、恋愛で一番効く麻酔薬なんだ。
直接殺すわけじゃない。
ただ、未来のない関係の中で何年も生き続けさせるだけ。
「彼女が戻ってきたんでしょ?」
と聞いた。
彼の目が少し変わった。
一瞬だけ。
でも私は見た。
四年の付き合いで、男がいつ嘘をつくかわかるようになる。
「違う」
「ただ連絡してるだけ」
私は頷いた。
「寝たの?」
彼は急に顔を上げた。
「そんなに嫌な聞き方しなきゃいけないの?」
私は彼をじっと見た。
「変ね。君たちがしたことの方が嫌らしいのか、私が聞いた方が嫌らしいのか?」
彼は黙った。
私は急に疲れた。
泣きたい疲れじゃない。
体の中に張っていた糸が、何年も張り続けて、急に切れた。
パチンと音がして。
むしろ静かになった。
昔の私ならきっと追及しただろう。
いつから?
何回会った?
彼女は何て言った?
まだ愛してるの?
私は一体何なの?
でもあの夜、私は一言も聞きたくなかった。
なぜなら、答えを知っても何も救われないって、急にわかったから。
彼らがどこでキスしたかを知っても、別れやすくなるわけじゃない。
彼が誰をより愛しているかを知っても、私の四年は返ってこない。
私は立ち上がった。
彼も一緒に立ち上がった。
「どこに行くの?」
「帰る」
「まだ話が終わってない」
私は振り返って彼を見た。
「何を話すの?」
「せめて話を最後までさせて」
「わかった」
私はもう一度座った。
「話して」
彼は私を長い間見つめた。
「本当に愛してたよ」
その瞬間、私の涙がこぼれそうになった。
感動じゃない。
怒りだった。
私はこの言葉が一番嫌い。
愛してた、って。
一度愛しただけで、その後のすべての傷を免責できるみたいに。
人を殺した後に、死体の横に花束を置くみたいに。
そして言う、「ほら、私は感情がないわけじゃない」って。
「知ってる?」
私は彼を見た。
「前は、ちゃんとしていれば最後に選んでくれるって、ずっと思ってた」
彼の目が赤くなった。
私は続けた。
「だから仕事が忙しくても文句を言わなかった。気分が悪くてもそばにいた。結婚を恐がるって言ったら、大丈夫、待ってるって伝えた」
「怒るのもすごく気をつけてた」
「怒ったら嫌われると思って」
彼は頭を下げた。
私は急に昔の自分が他人みたいに思えた。
あんなに小さく縮こまるなんて、どれだけ失うのが怖かったんだろう。
私は前、愛は包容だと思っていた。
でも包容に境界がないと、簡単に甘えになってしまうって、後でわかった。
人を理解することは、その人のすべての結果を背負うことじゃない。
「以恆」
私は彼の名前を呼んだ。
彼が顔を上げた。
「もう待たない」
彼の唇が少し動いた。
「ごめん」
「いらない」
私はバッグを取った。
今度は、彼は私を止めなかった。
コンビニを出た時、雨はもう強くなっていた。
傘を持っていなかった。
私は軒下に立って、スマホで車を呼んだ。
三分後。
私は頭を下げていて、周以恆からメッセージが来ているのに気づいた。
「家に着いたら連絡して」
私はその五文字をじっと見た。
昔の私なら泣いていただろう。
これが彼の一番残酷なところだから。
彼は決して完全に悪い人じゃない。
もし本当に悪い人だったら、とっくに別れていたかもしれない。
でも彼は、私が病気になった時に薬を買ってきてくれたし、香菜を食べないのを覚えていて、雨の日に傘を持ってるか聞いてくれて、一番答えが必要な時に黙る人だった。
彼の優しさはちょうどいいくらい。
私を引き留めるには十分。
でも安心させるには、いつも足りなかった。
車が来た。
私は後部座席に座った。
運転手が聞いた。「お嬢さん、冷房は大丈夫ですか?」
私は首を振った。
「大丈夫」
スマホがまた光った。
周以恆から電話が来ていた。
私はその名前が光るのを長い間見ていた。
一回目は出なかった。
二回目も。
三回目が鳴った時、私は直接スマホを切った。
そして泣いた。
ひどく泣いた。
映画みたいな綺麗な涙じゃない。
鼻水を拭きながら、睫毛がぐちゃぐちゃになって、運転手はバックミラーで二回私を見て、最後にティッシュ箱を後部座席に回してくれた。
「ありがとう」
私は一枚引いた。
あの夜、私は初めて認めた。
まだ彼を愛しているって。
とても愛している。
でも人を愛することと、その人と一緒にいることは、別のことだって。
前はわからなかった。
愛してないから別れられると思っていた。
だからずっと待っていた。
失望するのを。
諦めるのを。
彼を見て心が痛まなくなる日を。
後でわかったけど、必要なかった。
愛しながら、離れることもできる。
想いながら、電話番号を消すこともできる。
夜中に彼に電話したくても、スマホを伏せて無理やり寝ることもできる。
人をやめるのは、突然愛さなくなることじゃない。
毎日少しずつ愛を減らしていくこと。
一日目、メッセージを送らない。
二日目、彼のSNSを見ない。
七日目、あのレストランの前を通ってもまだ思い出す。
二十日目、友達が彼の名前を出しても、食事を続けられる。
二ヶ月後、クローゼットを整理していて彼のシャツを見つけた。
私はそれを手に取って匂いを嗅いだ。
もう彼の匂いは残っていなかった。
私は少し笑いたくなった。
匂いの方が人間より正直なんだね。
消えたものは、消えたんだ。
半年後、私はまたあのコンビニに行った。
同じ場所。
同じ冷房。
私はラテを買って、窓際に座った。
スマホでは昔聞いた歌が流れていた。
あの男が、誰かをやめられない話 を歌っていた。
前は聞くたび悲しく思った。
でもその日は、別のことを理解した。
本当にやめられないのは、恋人じゃない。
習慣。
依存。
傷ついた後でも、次は違うと信じ続けること。
誰かを未来に置きすぎて、いつか彼がいなくなった時、自分の未来まで見えなくなること。
私はコーヒーを一口飲んだ。
やっぱり美味しかった。
窓の外で誰かが傘を差して道を走っていた。
カップルが喧嘩している。
誰かがスマホを下向きに見ている。
街は誰が失恋したかなんて知らない。
世界はいつも通り回っている。
私は急にそれがいいと思った。
誰かが去っても、人生は本当に止まらないんだ。
周以恆も。
私が彼しかいないと思っていた何年も。
スマホが震えた。
知らない番号。
彼かもしれない。
でも知るつもりはなかった。
私はスマホをマナーモードにして、コーヒーを飲み続けた。
前は誰かが振り返るのを待っていた。
後でわかった、本当に待つ価値があるのは、ようやく自分を振り返る私だった。